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陶方見聞録

OLだった20歳の時、何気なく立ち寄った清水のギャラリーで、以前から思っていた物作りへの道に進むことを決心した。京都で生まれた楽焼きにこだわり、その楽焼きで今は年数回の個展も開く津田友子さん。開催していたグループ展のギャラリーと工房のある自宅で話を伺った。

縁や人の繋がりを大切に

営業事務の仕事をしていた。何か形に残るものを作りたかった。自分はこれで満足なのかと常々、疑問を抱いていた。そんな頃、清水のあるギャラリーを何気なく覗いていた時に、陶芸の世界で生きると決めたいう。そのギャラリーで気に入った器があったわけでもない。なぜそこで決めたのかわからない。独立して一年目の秋に、あるオーナーさんから電話があった。個展を開かないか、と。場所はあの清水のギャラリーだった。縁・・・。個展を開くたびにいろいろな人にお世話になり、新しい人との繋がりもできる。「縁や繋がりを大切にしていきたいですね」。仕事を辞め、楽焼窯元、楽入の三代目吉村楽入氏にお世話になったのもいろいろな人との縁があったからという。


楽入は茶碗や香合など主に茶道具を作る京都の楽焼の窯元である。その新しい“職場”では、物作りへの意欲はあったものの、業界の言葉や習慣はもちろん、普通の陶器と楽焼きの焼成温度の違いもわからなかった。3年目から窯元の親切で、仕事をさせてもらいながら、京都府立陶工高等技術専門校と京都試験場に通う。陶芸をある程度知ってからの方が身に付くという窯元の言葉通り、少しは陶芸がわかったような気がした。学校から帰り、夕方から仕事という生活が2年間。そして3年前に独立した。


教室を3件掛け持ち、自宅で作陶

今は陶芸教室の講師をしながら自分の作品を作っている。教室は3件を掛け持つ。グループ展など年数回の個展を開き、この秋にはレンタルボックス風ながら、パリに作品を送り展示してもらう。環境は違うが同じ志を持つ、専門校で出会った仲間とグループ展を開催し、そのグループ展で広がった“輪”を通じてまた個展ができる。


自宅工房の広さは畳4帖半くらい。新築のときに工房として設計した。楽焼には電動ろくろはあまり使わないが、さすがにプロ仕様のRK-1X型がある。作業テーブルと机、そして本棚。仕事の参考にする書籍がびっしりと並んでいる。八木一夫や富本憲吉、若冲、円山応挙などの図録・・・。気に入った作家の陶芸展や陶芸以外の展示会も時間を作って観に行く。「古いもの新しいものを素直に吸収し、自分の作品に生かせるものは生かせていきたいから」と。窯は電気窯と炭窯の二基、実家の庭に窯場を設けているという。ここで作陶し、歩いて2分の窯場で焼く。


工房の案内の際に楽焼きの土について津田さんから説明を受けた。津田さんは楽焼の土には白土と赤土の二種類を使う。急熱、急冷に耐えられる土で、ある程度、粗いものを使い、その土は自分で調合して作る。砂と粉末と鉄分を自分の手で合わして作っていく。そのサンプルを見せてもらった。パサパサである。調合後は可塑性が無いため、一年間くらい寝かして可塑性をつけるという。代々続く楽焼の窯元には何十年も寝かせておく土もあるそうだ。


精神的に健康であること

「個性のある作品、作品を見て津田友子とわかる作品を目指しています」と話す津田さんの作品は、茶道具のひとつである香合が多い。日本の家屋やフランス、イギリスなどヨーロッパの古い建物を形にした作品だ。母屋の古めかしさや歴史の流れ、風化した形のくずれなどを、楽焼独自の工程で焼色を付けて表現する。まるで原田泰治さんの絵を立体にしたような懐かしさを感じる。もう一つのこだわりは階段だ。「何事も一歩一歩」という津田さんの信条を形に表しているという。香合は、お茶の世界では5月から10月までは香木など木で作ったものを使い、11月から4月までは陶器のものを使うと教えてくれた。もちろん茶碗も作る。電動ろくろは使わない。土の塊から手びねりのように丁寧に形を作っていく。津田さんの抹茶茶碗を手に持つと楽焼き特有の手作りの温かさが伝わってくる。


香合も茶碗も個性的と思うが、目指すところにはまだ到達していなく、自分の作品を模索中という。「未だに陶芸が自分に向いているのか自信はありません。でも、物作りをずっと続けて行きたい。続けなければ結果は出ない。陶芸に携わってもう十年ですが、まだ十年と思っています。いつ結果がでるかわかりませんが、見栄を張らず背伸びをせず、自分のできる範囲のことで精一杯、物作りをしていきたいと思っています。死ぬ間際まで作っていたいですね」。そして、常に精神的に健康であること、と付け加えた。
(聞き手:船)

陶芸家 津田友子

京都市生まれ

OLをしていた20歳のときに陶芸の世界へ。
1997年 楽入窯 勤務

2001年 京都府立陶工高等技術専門校 成形科 終了
2002年 京都市立工業試験場 陶磁器コース本科 終了
現在、京都を中心に、大阪、神戸のギャラリー、
百貨店で個展を開催。


常設場所

ホテルグランビア京都(最上階廊下)
ギャラリーさゑき(京都祇園)
ギャラリー美器(京都清水)
ギャラリー佐勘(京都奥嵯峨)
PARIS-ART-DEBUT(パリ/フランス)